第3章 後継者育成

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下記にテープ起こし原稿を掲載します。話の中で省略された言葉を多少補足してあります。

5.スタディハウス

Q 先生はスタディハウスというのも作られていますね。

井上萬二
作ったんじゃなくて、これは60歳になったとき、今から20数年前。今私は83歳です。83歳と言いたくなくて、38歳と言っているんですけど。スタディハウスというのは、60歳になったら、あくせく働かないで、今まで働いてきたから、一つ人里離れたところで、ひそかに好きなものを、営業にとらわれず好きなものを作ろうという意識で作ったんです。
それから人間国宝に指定されたり、社会に出ることが多くなり、そこに行く機会がなくて、もっぱら自分の家で作陶に励んだんですけど、せっかくの館を作ったのに、そのまま捨てるわけにはいかない。それでもう14.5年くらいになりますが、陶芸を学びたい人は来ませんかということで、月に2回、自分の館を開放して、そこに教えに行っています。陶芸教室というのは、趣味で作る世界ではなくて、本来の有田の磁器というのはこういうものだということを、基本を1年間みっちり教えるんです。
何も作らせないで基本を、ひたすらに基本を教えるものだから、こんなことだったら教室に来る必要はない、こんな厳しい世界だったら来る必要はない。来なくてもいいように、来れないようにわざと基本を教えている。それでもあえて10何年も来ている人が半数以上いるんです。そういう教育の場を設けているんです。
だから、趣味の陶芸教室ではなくて、修練の場を作っているんです。何も作品の作らせないで、基本を1年みっちりやって、それをマスターできたら一つのものを作らせようという意識です。
なぜ、基本を大切にするかというと、基本さえ学べば、あとは応用が利くからです。

Q スタディハウスは、今でも応募できるのですか・

人数に制限があります。今20数名来ています。今でも入りたいという方がいらっしゃるけど。生徒の中から役員を設けて、あなたたちが全部管理をしなさい。こういう申し込みがあります。もしあなたたちの中で辞める人がいたら、新しく入れなさい、ということにしています。私は一切関知しないことにしています。
授業料はまったく取っていませんが、生徒たちが自主的に集めたお金は、彼らの研究費に使ったり、焼き物の里を訪ねる研修旅行の資金にしたりしています。
授業料は取っていませんが、設備費とかいろいろいりますから、そういうものに充当して運営しています。私は館を提供するだけです。

Q 20数名の方はなかなか辞められないですか。

井上萬二
なかなか辞めないですね。今年も2、3名の方から申し込みがありましたけど、管理している人に伝えておきました。