第3章 後継者育成の課題

このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得

★上のプレイボタン(右矢印)をクリックすると、再生されます。

下記にテープ起こし原稿を掲載します。話の中で省略された言葉を多少補足してあります。

4.伝統的な有田焼きを

 私が作ったものは、焼成温度を他の人より50度も100度も上げて、完全に焼きしまっていますから、夫婦げんかして投げても割れません。それくらい焼きしめていかないと、本当の有田焼きではありません。そう言うと周りに嫌われるから、あまり言わないようにしていますけど。
でも、これだけ焼き物が低迷してきたなら、昔の有田焼というものを作り上げないといけないと思います。

 本当の有田の良さ、伝統的な文化をよく知った上で焼き物を作ることが大切です。私が見習いのときは、ロウロ壺と言っていました。ロクロ壺に入るには、「おまえたちは焼き物が焼き上がるまでのすべてを知っていなければ、本当の職人にはなれないぞ」と言われたものでした。

 「今日は朝からロクロ壺に入っていいぞ」と言われたときは、一窯分のはまを作らされました。何十種類もあるものを何百個と作る。そういう仕事ばっかり、見習いのときは5年、10年させられました。10年、20年経ってやっと、「茶碗が作れるようになる程度だ」と言われます。
 細工見習いというのは、タダで使っていいとなっていましたから。雑役夫でもいくらか払わなければなりませんが、細工見習いは技術を習得しに来ているのだから、タダで使っていいということになっていました。
茶碗が作れるようになっても、その窯に居る限りはいつまでも見習いということで、お金をもらえない。自分たちも小遣い銭くらいは稼ぎたいですから、そこを辞めて別の窯に入る。少しでも払ってもらえますから。

 こないだちょっと東京からお客さんが来られました。2,3日前、いろいろ見たけど、ああいう茶碗は使いたくない。高いけど、こういうのがいいと言って、高いけど1個買っていただきました。これで食べるから長生きしよう、ご飯もいちだんとおいしくなるだろうと言っていました。1年に1個、2年に1個売っていたのでは商売になりませんが、本当に好きな人の1個でもいいから、そういうふうにして買っていただけるような仕事をしなければいけない、ということを若い人に言って聞かせています。
置いているだけでは、天草の原石と同じ。値段が付いて売れれば、がんばった私たちの価値があります。

 私も職人として今まで使われてきた身ですから、親方の皆さんに言うのですけれども、「あなたたちが職人さんたちを大事にかわいがってくれれば、自分で独立する必要がないと思う人もいる。職人のままでいいと思う人もいる。辞めないように、あなたたちが職人さんを大事に育ててあげてはどうか」と言っています。
 私も2代目社長が、大事に育ててくれましたから、給料は安いけど辛抱すれば、将来に他人に負けないくらいの修行をさせてもらえると思ったから40年も辛抱できたということなんです。