DAYO本舗通信  

    佐賀県の伝統文化を取材し、「i-ラーニング」コンテンツ製作へ着手

  11/2-7日、佐賀県の伝統文化取材から返ってきました。佐賀では有田、伊万里、鍋島焼の窯元を中心に取材しました。
 現地の陶芸家と窯元の経営者、歴史資料館館長、有田町長などの 方々にお話を伺い、ビデオを撮影することができました。
 陶芸関連の取材先として、そうそうたる方々から修行の苦労話、現在の問題、 後継者育成などのお話をお聴きし、かつ技を拝見しました。
 お会いする方が、皆さん本当にすばらしくて、深い感銘を受けました。私はもうすっかり佐賀ファンになってしまいました。
多忙の中、取材の手配や取材に同行してくださった県職員のお二人には、本当に感激しました。6日間、ずっとお世話になりっぱなしでした。そのおかげで、最高の取材ができました。その成果は後日、「アイラーニング」サイトの教育コンテンツとして発表します。ご恩は良いコンテンツを作ることでお返ししたいと思っています。
 大急ぎで取り組みますが、データが多いので、年明けになるかもしれません。
 下記に、取材の概要をまとめました。ご一読ください。
  取材日・取材先・取材内容  
11/2(金) 到着日  

唐津くんち

 佐賀に到着した初日は、唐津くんちの宵山でした。夜、案内していただいて取材に出かけました。運良く、曲がり角の絶好の位置で撮影することができました。
 急カーブを大きな山車が、真横を通り抜ける瞬間は迫力満点。もし山車が倒れてきたら、後の取材はパーになるなという恐怖感におびえながら、しっかりビデオを撮っていました。子供たちが威勢良く楽しそうに山車を曳いている姿が印象に残りました。祭りは、子供たちが成長するのに必要な行事なんですね。

からつくんち
11/3(土)  

人間国宝
 井上萬二氏

 昭和4年生まれの83歳。お話の中からあふれ出る創作への情熱、関係者への気遣い、そういった萬二氏の人間的魅力そのものに心を惹かれたインタビューでした。
 毎年、銀座で個展を開く。そのために現在の作品よりもさらに上をいく作品を創り続けている。それは非常に苦しいことだが、現状に甘んじたくはない。そういう言葉がありました。そうはいっても、非常に高いレベルの、さらにその上をいくのは至難の業。それを尋ねると、「技術を磨けば、おもしろいセンスが生まれてくる」という答え。
 一流の陶芸家になるには、30年の修業が必要と言われます。「道を究めることの難しさ、苦しさ、そして楽しさを見いだしたとき、思いがけない発見があります」という萬二氏の言葉があります。
 インタビューでは、この言葉の意味を深く追求したいと思いました。それが後継者育成のヒントになるとも考えました。
<参考になるホームページ>
http://www.umakato.jp/waza/artist/artist03.html

いのうえまんじ

有田歴史民俗資料館
 尾崎葉子館長

 2016年で、有田焼発祥400周年になります。尾崎館長には、佐賀の焼物の歴史について、初心者でもわかるように、やさしくていねいに語っていただきました。
 有田焼の誕生から、江戸、明治・大正・昭和でどういう発展と変遷を遂げたのか、短い時間の中でわかりやすく解説していただきました。
 このインタビューを視聴すれば、有田、伊万里の歴史が非常によく理解できると思います。

<有田歴史民俗資料館>
http://rekishi.town.arita.saga.jp/

おざきようこ

昭文窯
 村島昭文氏

 村島昭文氏は、深川製磁に皇室御用達職人として長年勤務し、退職後は陶芸作家として活躍されています。ろくろにおいては「神の手」を持つと言われている人です。いったいどれはどういうことなのかをお聞きしました。まさにそこに昭文氏の職人魂が集約されていました。
 皇室に納める磁器は、数個から数百個までの範囲で、同一の物を揃えなければなりません。機械で製作するのであれば苦労はありませんが、昭文氏はすべて手作りです。
 納品時には厳しい検査が行われ、品質はもちろんのこと、寸法の誤差は0.5ミリ以内でなければなりません。それがいったいどれほど高度な技を必要とするか、想像を絶するものがあります。
 インタビューでは、その神の手の技を実際に撮影させていただきました。非常に貴重な映像です。お話も勉強になることばかりで、技術を磨くことの厳しさと喜びについて、熱く語っていただきました。昭文氏は現在76歳。あふれんばかりの陶芸家魂に圧倒された取材でした。

<参考になるホームページ>
http://aritakan.sagafan.jp/e460420.html

murasimashobun

有田焼街道

 人通りも少なく、ふだんの有田の街は、古い建物が残る静かで浪漫あふれる街です。 その通りを撮影しました。5月の陶磁器祭りのときは、路上にたくさんの商品が並べられます。

 焼き物の美しさ、感触、重量感は、実際に触れてみないと、絶対にわかりません。いくらいい写真が撮れたとしても、そのすばらしさは伝えられません。 私は今回の取材で、最高の有田、伊万里、鍋島、柿右衛門の磁器に触れることができました。それはどれも美しく、気品があり、繊細で、優雅でした。

 もどかしいですが、ぜひ展示会があるときに、足を運んでみてください。

ありたやきものかいどう

佐賀のバルーン・フェスタ

 11月の文化の日前後は、バルーン・フェスも開催されています。取材に向かう途中で、そこに遭遇し、撮影することができました。
前日から快晴で、たくさんのバルーンが空中に浮いていました。青い空をバックに、優雅に浮かぶ熱気球は、とても美しかったです。
 でも、近づいてみると、バーナーの噴射する音が意外と大きいのですよ。

バルーンフェスタ
11/4(日)  

しん窯
 梶原茂弘社長

 東京の大学を卒業後、家業を継ぐために帰郷。それは学生時代から決めていたことだと、梶原社長は言います。自らは陶芸家への道を断念し、窯と職人と地域を守る道を選ぶことを決めました。
常に職人を含む社員のことを思い、地域の活性化のために奔走し、後継者育成に頭を悩ます梶原社長。やさしい語り口調からも、その気遣いがあふれていました。
 梶原社長は商品開発にも意欲的に取り組んできました。現状維持に甘んじていると、会社は衰退していきます。会社経営では、常に成長していくことが求められます。
 その成果の一つとして挙げられるのは、「青花」という自社ブランドの普及。その愛好家は、皇室や芸能界から一般まで、幅広く存在しています。
インタビューでは、経営者の視点から有田焼の発展と課題、後継者育成について語っていただきました。、

<ホームページ>
http://shingama.com/shingama.html

かじわらしげひろ

有田焼卸団地協同組合 (篠英陶磁器)
 篠原照比古理事長

 有田の窯元、商社(卸)、消費者、専門家がプロジェクトチームを作り、新商品を開発するというプロジェクトが、2005年にスタートしました。その名は「匠の蔵プロジェクト」。
 第1弾は焼酎グラス。もちろん磁器。マーケティングからユーザービリティ、オリジナリティまでしっかり研究開発したかいがあって、大ヒット商品となりました。その後、徳利、カレー皿など次々とヒット商品を連発してきました。現在は第7弾を開発中とのことです。
 そこで、現在このプロジェクトの中心メンバーの一人である有田焼卸団地協同組合、篠原照比古理事長(篠英陶磁器)にお話を伺いました。
 このプロジェクトの成功は、生産者と消費者、それをサポートする商社、専門家の一致団結によってもたらされたものです。それは同じような環境にある他県のビジネスモデルになるのではないか。そういう問題意識で取材に当たりました。
やはり学ぶべきところが盛りだくさんでした。

http://www.takuminokura.jp/

しのはらてるひこ

佐賀のチャンポン

 取材の途中、昼食では何度かおいしいチャンポンを紹介していただきました。長崎とは少し違うそうですが、佐賀もチャンポンの本場です。 食べてみると、ほんとにおいしい。スープはコクがあるけど、重たくない。具は、タンメンのように野菜たっぷりで栄養たっぷり。塩分控えめで、さっぱりしている。これなら毎日食べてもいいなと思いました。

ちゃんぽん
11/5(月)  

光山窯
 市川浩二氏

 鍋島藩窯の流れをくむ光山窯の継承者、第19代市川光山になります。
 ご本人の言葉に、「江戸時代の鍋島ではなく、そうかといって目新しいだけの鍋島でもなく、江戸時代の鍋島がそのまま続いていたら、こうなっていただろう、鍋島です」、というものがあります。
この言葉が市川浩二氏の追求している技・芸術を簡潔に表しています。
 ほとんどが分業体制を取る鍋島焼の中にあって、全行程の資格を持っています。それが技術を高めるために必要であるということです。
伝統の美と現代の技が重なり合って創り出された作品を拝見し、その美しさに感銘を受けました。

<光山窯のホームページ>
http://www2.ihn.jp/~kozan/

いちかわこうざん

秘境・伊万里の坂道

 伊万里の里には、鍋島焼の窯元がたくさんあります。 その街並みは、秘境とよぶにふさわしく静かで、自然が豊かで、それでいて人々の息づかいがきこえてくる所です。狭い路地を歩くと、窯元や店が建ち並び、昔の街並みを残しています。江戸時代の職人さんたちもここを歩いたのか、と思いながら、一歩一歩坂を上りました。

 直販の店舗もたくさん並んでいるので、ショッピングにも、名品鑑賞にも楽しい小道です。

いまり

伊万里・陶石粉砕器のある小屋

 伊万里の里の川のほとりに、磁器の原料となる陶石を砕く装置があります。水車小屋風の建物の中には、水の重さによってシーソーのように上下し、尖端にある槌で石を粉々に砕く装置が備え付けられています。 とっても風情があり、絵になる光景でした。

いまりのこや
11/6(火)  

有田焼創業400年事業実行委員長・有田町長 田代正昭氏

 約400年前の1616年、豊臣秀吉による朝鮮の役で、朝鮮からつれてこられた李三平によって、有田の地で陶磁器の生産が始まったとされています。
 それを記念したイベントが佐賀県で大々的に予定されています。その「有田焼創業400年事業実行委員長」が田代正昭・有田町長です。
 田代町長の構想は壮大です。マイセン、景徳鎮といった焼物の盛んな都市と友好都市ネットワークをつくり、”世界の有田”をめざそうとしています。
 2016年の記念行事では、「世界陶磁器フェスティバル」を開くという構想もあります。先人たちの偉業と伝統を、有田の地から世界へ発信していく、という新しい時代の取り組みが、今まさに始まっています。

<有田町のホームページ>
http://www.town.arita.lg.jp/ 

ありたちょうちょう

畑萬陶苑
 畑石真嗣氏

 畑石氏は、会社の社長でもあり、陶芸作家でもあります。驚かされたのは、そのマルチタレントぶりでした。
 伊万里・鍋島焼の伝統技術は当然継承しながらも、現代の日本人の生活に合致する表現があってもいいのではないか、という考え方を持ってい らっしゃいます。
 そこから多彩な作品が生まれ、たくさんの人気商品が生まれています。風鈴、ビアグラス、酒器、ペンダント、香水瓶、マグカップなど。それらが伝統技術と現代的センスが融合し、優美で繊細な味わいを醸し出しています。
 畑石氏もまた、常に地域全体の活性化と後継者育成を考えています。そのために、いろいろな働きかけを行ったり、イベントを開催したり、全国から海外まで飛び回ったりしています。

<畑萬陶苑のホームページ> 
http://hataman.jp/

はたいししんじ

鍋島御庭焼
 市川光春氏

「鍋島御庭焼」という名称を名乗ることが許されている唯一の窯元が、ここです。
 この「御庭焼」の由来は、 「文禄三年(1593年)、直茂公帰陣のおり国の宝になさるべく、高麗より数多くの焼物師を召し連られ、上手頭立者6,7名を金立山のふもとに召して焼物を作らせられるとある。これが「御庭焼」の創始である」(同窯ホームページより)
 光春氏の鍋島焼は、本家本元の伝統を継承する鍋島です。その技法の特長についても、教えていただきました。
 入門者は、ひたすら半年間、1本の線を引く練習をします。一応引けるようになった頃、本番の磁器に線を引かせてもらえるようになります。そうやって、数十年かけて少しずつ技術を高めていきます。実際に完成品を拝見してみると、線の美しさ、繊細さに驚かされます。さらに美しい色使いがあります。

<御庭焼のホームページ>
http://www.imari-ookawachiyama.com/kamamoto/14/index.html

いちかわこうしゅん
11/7(水)  

佐賀錦振興協議会
 前島梅子会長

 佐賀県といえば、磁器だけではありません。佐賀錦という織物も有名です。どういうふうに作られているのか、興味津々で取材してきました。 佐賀錦は、縦糸が金箔を貼った紙を細く切ったもの、横糸が絹の糸です。不思議な織物です。

 振興協議会の前島会長にお話を伺うと、最高でも1日に2センチくらいしか織ることができないとのこと。写真のバッグくらいになると、何ヶ月もかかります。忍耐のいる仕事です。 それでも入門講座は満員とか。佐賀の女性は忍耐強いのでしょうね。

 佐賀錦の発祥は、190年前、鍋島藩で生まれました。一時低調になったものの、明治43年、大隈重信が博覧会に出品したところ好評を博し、再び盛んになりました。
 県外の人は展示会でしかお目にかかれないかもしれません。関東地区では、2013年2月に、府中の伊勢丹で佐賀フェアを開催するので、そこに出品するそうです。ぜひご来場ください。

http://www.saga-cci.or.jp/company/nishiki/index.html

まえじまうめこ

天吹酒造

 佐賀取材の最終日、最後の取材は「天吹酒造」さんでした。案内していただいた県庁職員のお友達が、蔵人として勤務されているということで、いきなりの取材申し込みでしたが、応じていただきました。

 酒蔵の中、醸造の詳細を見せていただきました。お米の洗浄は、ストップウォッチ片手に秒単位で管理しているというお話に驚きました。 原料はもちろん、一つ一つの作業によって、品質つまり味に差が出るということです。同じ品質で製造する難しさ、厳しさがよくわかりました。 地元の酒屋さんに言わせると、今年の商品の中で一番できがいい、とのこと。私も1本買って帰りました。佐賀のお酒は製造本数が少ないので、お早めに通販や直販でぜひ味わってみてください。

http://www.amabuki.co.jp/index.php

あまぶきしゅぞう

(2012.11.12  発信者:DAYO本舗事務局長 宮原光彦)

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