上ノ山明彦

がんばらない (集英社文庫) 』  鎌田 實

 著者は現在、長野県茅野市にある諏訪中央病院名誉院長である。地域医 療の理想を実現するために活動してきた人である。1990年以降は国際医療 支援活動で活躍中である。経歴は次のサイトにあるので参照していただき たい。本人のブログもあるので、これも紹介しておく。
http://www.sbrain.co.jp/keyperson/K-5765.htm
http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/
 著者の経歴を押さえておかないと、本書の解説は進まないと思われるの で冒頭で紹介した。本書は2001年に西田敏行主演でテレビドラマ化され ているのでご存じの方も多いだろう。有名な本である。
 この本を読んで実感したことは、これは人の生き方の本だということ。
 次の引用にそれが端的に著されている。
「病気と闘い、勝ちにいう医療のときは、二十世紀の進歩した医療はとて も心強い。しかし医学がどんなに進歩しても、死は永遠には回避できない。 必ず訪れる死。病気と闘うときも、死を受け入れるときも、魂に寄りそっ てくれるような医療があったらいいなあと思う」(『がんばらない』、19頁、 集英社文庫)。)
 この「魂に寄りそった医療」の実現のために諏訪中央病院の医師、看護 士、保健婦、介護士、ボランティア、市民が一体となって奔走してきた。 その歴史の中では嬉しかったことも悲しかったこともたくさんある。そう いう出来事も本書に綴られている。
 鎌田實は1990年代から海外の医療支援活動にも着手して成果を上げてい る。ベラルーシの住民はチェルノブイリ原発事故による深刻な放射線障害 を発症した。特に子供たちの被害は深刻だった。白血病、甲状腺障害その 他もろもろの病気に苦しんでいる。現地に医師を派遣したり、医療機器、 医療品を送ったりする活動を展開している。その費用は音楽CDを作って 販売したりバレンタインチョコを販売したりと、ほとんど自前で調達して いるところがすごい。
 本書のタイトル「がんばらない」は「あなたは、あなたのままでいい」 「ありのままに生きよう」というメッセージでもある。何かと比べて、 自分は不幸だ、幸福だというのが現代社会である。知らず知らずのうちに 競争に巻き込まれている。本書は忘れていた大切なものを思い出させてく れる本である。
 参考文献:鎌田實著 『がんばらない (集英社文庫)