上ノ山明彦

 『最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版』  ランディ・パウシュ

 この本は大学生や高校生・中学生に読んでほしい本だ。著者がこの授業 のテーマとして、自分が夢をいかに実現してきたかについて語っているか らだ。パウシュがなぜこの授業を行うことになったか。まずそこから紹介 したい。
もし自分の寿命があと6カ月と医者から宣告されたとしたら、あなたは 残された時間をどう過ごすだろうか。パウシュは実際そう宣告された。  そのときから彼は自分のことよりも、残される妻子のことをいつも考え、 そのことに多くの時間を費やした。
 そんなとき勤務するカーネギー・メロン大学から「最後の授業」を依頼 された。その模様は録画され保存される。パウシュは迷った。授業の準備 に多くの時間が奪われてしまう。しかもその前日は妻の誕生日だ。
 悩んだ末、彼は最後の授業を引き受けることにした。そこには大きな目 的があった。
 学生たちに「夢を実現するにはどうしたいか」について話しながら、同 時にまだ幼い子供たちに向けて人生の生き方を伝えることだ。まだ幼い子 供たちは自分の記憶を忘れてしまうだろう。大人になったとき、自分の父 親がどういう生き方をし、どう死と向かい合ったのか、知ってほしかった。
 本書には、その「最後の授業」が収録されたDVDが付いている。陽気に振 る舞いながら、自分がいかにして壁を打ち破り夢を実現してきたか、ユー モアを交えながらパウシュが語っている。
 私の心に強く残った言葉は、夢を実現しようとすると、壁にぶちあたる。 「レンガの壁があるのは、理由があるからだ。僕たちを寄せつけないため ではない。この壁は、自分がどんなに真剣に望んでいるかを証明するチャ ンスを与えているのだ」。心から真剣でない人、熱意がない人は、その壁 の前であきらめてしまう(ああ、私は何度そうしてきたことか)。本当に情 熱がある人だけが、壁を乗り越えて夢を実現できる。壁があっても、どこ かに道はある。自分の情熱と知恵でそれを打ち破れ。パウシュはそうやっ て何度も夢をつかんできた。彼の言葉には説得力がある。
余談。迂闊にも私はパウシュのことをずっと知らなかった。知ったのは 子供がWiiで遊ぼうというので、「Wiiの間」を見ていたときだ。キング牧 師、J.F.ケネディなどの名スピーチと名を連ねてパウシュのものがあった。 カーネギーメロン大学の卒業式での祝辞だった。それは「最後の授業」の 後に行われたもの。私は何気なく見ていた。
 この人は死を目前にしながら卒業生の将来のために意味ある言葉を残し ている。私は衝撃を受けた。天職を持ち、39歳で最愛の人と結婚し、2人 の息子と1人の娘を持ち、幸福の絶頂で過酷な運命に直面し、47歳の若さ でこの世を去ったランディ・パウシュ。絶望と希望の中で残した言葉。
 この本の中に書いてあるが、青年期の自分は高慢で友達からは「嫌なヤ ツ」と思われていた。「最後の授業」の後は、「聖ランディ」と冷やかさ れた。
 夢を追い続け、多くのすばらしい人と出会い、その人々から学ぶことが 自分の成長にも夢の実現につながることをパウシュが教えてくれた。

●『最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版 』、ランダムハウス講談社より発売中

ランディ・パウシュ:カーネギーメロン大学卒業式でのスピーチ (YouTubeへのリンク)


(2010.1.27)