上ノ山明彦

最後の相場師 (角川文庫)  津本陽

 小説に世界に「経済小説」というジャンルがある。いわゆる実業の世界、つまりビジネスの世界を舞台にしたストーリーである。
  ここでは殺人事件も超常現象もSFも必要ではない。企業の支配権をめぐる経営幹部間の謀略と争い、同僚間の出世をめぐる争い、企業間の生き馬の目を抜く戦い、政治家と企業家の癒着や謀略、それに対するジャーナリストの闘い、などが主な素材となる。
  日本では城山三郎がこのジャンルでは有名である。境屋太一もたくさんの経済小説を発表している。
  津本陽は歴史小説、時代小説の大家であり、私が尊敬する作家の一人でもある。彼の作品の中に、この「最後の相場師」がある。これには侍も殺人事件も出てこない。ひたすら株式相場の話である。単調な話だけに、読者を飽きさせない展開、むずかしい専門用語をさりげなく理解させるテクニックが必要になる。その点についても、津本陽はその文才を縦横無尽に発揮している。
 こういうジャンルを書きたいという人必読の本として推薦したい。

 『最後の相場師 (角川文庫) 』、津本陽著

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