上ノ山明彦

「おじいちゃんの桜の木」

 ここ3年間の私の読書量はかなり多いほうで、いろんなジャンルの本に感激しています。最近読んだ本の中で、「おじいちゃんの桜の木 (おはなしプレゼント)」(アンジェラ ナネッティ 著、小峰書店刊)は、じんわりと心にしみる作品でした。
 小学校に入る前後の少年トニーノが、おじいちゃん、おばあちゃんからいろいろなことを教えてもらう。特におじいちゃんとは大の仲良し。そんなところにいろいろな悲しい出来事も重なる。小さな事件も起きる。トニーノは小さな心を痛めながら、小さな勇気を奮い起こして闘う。最後は...。そんな話です。
 話はトニーノの目線で展開されていきます。その心理描写が実にうまいのです。私は「ばあちゃん子」でしたから、その頃のことをふと思い出してしまいました。そうそう、そんなふうに思ったんだと。そうでなくても元来おじいちゃん、おばあちゃん物には弱い私なのであります。
 そして最後は、少年が冷静に「死」という重厚な問題と向かい、小さな心でそれを受け入れていくのです。イタリアのすぐれた児童文学におくられるチェント賞、バンカレッリーノ賞を受賞しています。これは本物でした。児童文学を志す方はぜひ読んでみてください


(2008.2.25)