上山明彦

『日曜日の読書』 阿刀田高

 阿刀田高(あとうだたかし)という作家を以前からすばらしい作家であると思っていました。最近、古本屋で彼の本をまとめ買いしました。研究したいことがあったからです。
 その1冊に『日曜日の読書』(新潮文庫)』というエッセイがありました。これを読み出したとたん、目から鱗が落ちたというか、頭をガツーンと打たれたというか、全身を大きな電流が流れました。しびれてしまったのです。長年頭の中に疑問として残り、解答が曖昧模糊の状態だった問題に対して、阿刀田高が明快かつわかりやすく答えていたからです。こんなすばらしい本のことを知らなかったなんて!
 阿刀田高はコンピュータメーカーの富士通の社員研修で十数年間文学講義を受け持ちました。この本はその時の話を基にまとめたものです。もの書き志望者を相手に話したわけではありませんが、質の高い内容です。

 もの書きという立場から歴史に残る作家とその作品をどう読むか。そもそも小説にどういう意味があるのか。作家に必要な資質とは何か。ベストセラーをどう評価すべきか。そんな話が語られています。一面的にならないように、読者に誤解を与えないように細心の注意を払いながら、実に筋道を立ててしっかりした結論が述べられています。
 自分がどういうふうに作品を書き上げているか、なぜ作家になったのかなど、本音も語られています。
 この話は整理が必要なので、あらためて「有名作家はどうやってプロになったか」のページでじっくり紹介したいと考えています。もの書き志望の方は、ぜひ読んでみていただきたいと思います。
 (2005.1.13)