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タイトル |
東慶寺と駆込女 |
著者 |
井上禅定 |
発行年月 |
1995年6月 |
出版社、定価 |
有隣堂 952円+税 |
キーワード |
歴史資料, 東慶寺, 縁切寺, 駆込寺, 離縁, 三行半 |
著者は、鎌倉東慶寺の ご住職で、今は故人。縁切り寺、駆け込み寺として有名だった東慶寺に残 された文書を元に、女性の歴史を紐解いた本であ る。特に江戸時代、女性の社会的地位はどういう状態だったか。女性たち がなにゆえに駆け込み寺に救いを求めてきたのか。どういうふうに夫と離 縁したか。あるいは復縁したか。 本書は主に江戸時代の事件を紹介しているのであるが、現代と比較して 考えるとき、男と女の諍いは、本質的な部分ではあまり変わっていないこ とを痛感させられる。 本書を読むと、江戸時代は東慶寺が奉行所と協力して、町内会の名主、 年寄り、5人組といった自治組織に責任を持たせ、女性を保護していたこ とがわかる。反省しない男がいても、社会的な強制力があったのである。 これなら江戸時代のほうがマシではないか、とさえ思えてくる。 鎌倉東慶寺は明治時代になってから縁切り寺法も尼寺も廃止され、現在 の姿に至っている。その歴史も本書で知ることができる。
(評者: 上ノ山明彦)
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