第3章 後継者育成の課題

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下記にテープ起こし原稿を掲載します。話の中で省略された言葉を多少補足してあります。

3.形が完璧に身に付くまで辛抱

Q 修行中の人が、ふだん気を付けるべきことは何でしょうか。

村島昭文
 自由に仕事をしたいと思うかもしれませんが、そうするとせっかくの形が崩れる。最低でも5年は辛抱して、完璧に覚えてしまえば形が崩れない。そう話して聞かせています。陶芸家の聞こえがいいから、そっちに走りたがります。一生それで生活していくつもりなら、職人技を身につけていたほうが、息が長いですよ。遊び気分で食べていける時代は終わりました、と。かつて30年くらい陶芸ブームがあって、技術がなくても作りさえすれば売れる時代があった。今は低迷して、一般食器まで売れなくなっている。いま店には手作りの本物にしかない、と言っています。その技術を習得しないと、これからはたいへん苦しいと思います。

 生徒に対する指導は大変ですが、全然きらいじゃないので、何人来てもいいです。一晩に一人来た、二人来た、と云うようにバラバラに来る。それでも全然苦にならなりません。自分も一緒になって喜んで作ったり、ああしてはどうか、こうしてはどうかと言ったりします。

Q 先生に教えてもらいたい場合、どうすればいいのでしょう。

村島昭文
 いろんな人に聞いて、「どうせなら村島昭文さんところに行ったほうがいいぞ」と、「技術的にはあそこが最高だと言われてきました」と言われてくる人がほとんどです。

 私は個人の窯に入しましたが、20歳上の人たち、30代くらいの全盛期の職人さんたちが先生でした。昔は内山で10人全員が同じ伝統技法で作っていました。誰も教えてくれない。見て覚えろ、というやり方でしたが、誰の技法を見ても同じでしたら、迷うことがありませんでした。それぞれの良い所だけを学べばよかったのです。
 今は窯業学校でも、一人ひとり教え方が違う。生徒も学校を卒業してからうちへ来て、面食らったと言っています。1年生、2年生と教科書が違う。学校だから仕方がない、と私は答えています。「あなたが本格的に学びたいならば、本当は5年くらいかかるところを、最低でも2年間は基礎から勉強して、私の技法をマスターしなさい」と言っています。

 我流の人はキズが多いです。割れとか巻きとか、一番悪いキズです。土こねが悪かったり、のべ下げが悪かったりするのが原因です。我流の人は手先は器用ですが、キズが多い。私は1回で100%取れます。ほとんど失敗がない。
 のべ下げは、土こねしたものを、ロクロの上でもう1度上げたり下げたりして均一にする。手こねだけでは完璧には均一になりませんから。昔は土こねは、「土こね3年」といって、弟子入りすると、先輩の土を一日中こねなければなりませんでした。そういう仕事は、今はしません。
 昔とは土こねも違っています。今は真空の袋から出したものをゴロゴロ転がした後作っています。それは土こねではないです。
 「あなたたちが独立して、1回くらい失敗した粘土を元の土として戻していたら、燃料代で終わるよ」、と。失敗した土も、完璧に自分でこね上げて、米粒ほども残らないくらいに使いこなすくらいの土こねをしないと、利益は出せない。そう言っています。