音響彫刻家・原田和男氏は、音の出る鉄の彫刻を製作する彫刻家である。彼は自分の作る楽器を「シデロ イホス−鉄の響き」と名付けている。
原田氏の作品を楽器として見ると、普通の楽器と大いに違っている。鉄の楽器を叩いたり、弓で弾いたりして一つの振動音を出すと、それに対して音の共鳴や干渉が発生する。すべての振動体が振動する。違う音、残響音が入り交じった複雑な音が発生する。それが特別な響きとなり、自然界にあるような心地よい響きとなって、聴く人の耳に届く。
普通の楽器は一つの打音に対して一つの音しか発生しない。それだからこそドレミファソラドの音階を奏でることができるのだ。だから原田氏の楽器は、普通の音階楽器としては使えない。むしろ原田氏は、干渉や残響音が発生する楽器は、音楽の世界では抹殺された楽器だろうと考える。
「鉄の響きと時で心象風景を描く音楽」。それが原田和男の音楽である。
彼の造形は「三次元半の造形」とも呼ばれる。平面と立体と「今という時」、それが三次元半だ。
鑑賞者が作品を見る。こつんと叩く。心に響く音を聞いてにこっと微笑む。まさしく三次元半の造形である。
Podcastではインタビュー、原田和男氏による演奏、自動演奏作品を配信している。「シデロ イホス」であなたの心象風景をぜひ描いていただきたい。
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音響彫刻家 原田和男氏
昭和26年東京生まれ。
東京芸術大学美術学部卒。 |