宮部みゆきに学ぶ
小説教室に通いながら投稿に専念
作家になるには、これという決まった道があるわけではない。どこの学校を出ようと、どういう職に就こうと、有利になるわけではない。この原稿では、そのたくさんの例を集めているが、それをどう役立てるかは、読者のみなさん次第である。
宮部みゆきの本を読むきっかけになったのは、妻が彼女の大ファンで、わたしに強く読むようにすすめたから。わたしは日本人の作家が書く本に対して偏見のようなものを持っていたので、シブシブ読んでみた。
偏見というのは日本の作家の作品は私小説が多く、自分だけの世界に閉じこもった内容が多いということであった。他人にとってはどうでもいいような些末なテーマについてクドクド書いているようなものが多いと感じていた。
宮部みゆきの作品は、取り上げるテーマが社会的である。「理由」とか「火車」は実際にあった事件を題材に書いている。人間社会の普遍的テーマがそこにある。ストーリーの展開も緊迫感があるし、主人公の心の動きやおかれた状況が目に浮かぶように描かれている。表現力が豊かで感覚が繊細だなという印象だ。
作家になった道について調べてみた。宮部みゆきは一九六〇年十二月、東京下町に生まれ、短大卒業後、法律事務所に勤務しながら講談社フェーマススクール・エンターテインメント小説教室に二年間通い勉強しました。その傍ら小説を書き、一九八七年、 「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞しプロ作家としてデビューした。その後の彼女の活躍は良く知られている通りで、数々の賞を総なめしている。
この間、宮部みゆきは懸賞にかなりの数の小説を投稿している。短編と中編が多かったようだ。法律事務所では給料が安かった反面暇だったので、たくさん本が読めたし、判例時報も片っ端から読んだと語っている。それがその後の小説の素材になったのだろう。
作家をめざすなら芽が出ない時でも焦らず、時間を有効に使って資料を集めたり、他人の作品を読んだりすることが重要である。それがその後の自分の成長につながることは間違いない。
そうは言っても、世間から認められない間は精神的に負けてしまいそうである。ひたすら自分の才能を信じて、才能を伸ばすことだけを考えることができるかどうかが、人生の分かれ道なのである。