上ノ山明彦

『宇宙への秘密の鍵』スティーブン・ホーキング博士

 昨日の新聞広告に、ホーキング博士の新刊、「宇宙への秘密の鍵」の広告が載っていました。私はさっそく注文しました。
 博士が1990年9月に来日しています。当時は前年に、博士から『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』という本が出され、世界的な宇宙ブームのまっただ中にありました。私もワクワクしながら記者会見に参加しました。そしてなんと、博士の目の前2メートルの位置から写真を撮ることができたのです。博士がどういうふうにインタビューに答えているか、つぶさに見ることができました。今から思えばなんという幸運だったのでしょう!
 場所はたしかホテル・ニューオータニだったような気がします。取材ノートは捨てないようにしているのですが、今はどこへいってしまったやら...。当時の資料が今みつからないので正確ではありません。記者やマスコミ関係者だけを集めた会見で、数百人が会場に詰めかけていました。当日、会場設営のためにいたホテルの従業員の一人が天文学ファンで、記者でもないのにホーキング博士に質問し、周囲の笑いを誘ったというエピソードがあります。その気持ちはよくわかります。宇宙学に興味がある人にとっては、ホーキング博士は神様のような存在ですからね。その勇気に乾杯です。
 
 ホーキング博士は自著でも紹介されているように、大学院生のときに「筋萎縮性側索硬化症 ALS(amyotrophic lateral sclerosis)」という難病を発病しています。
 博士がどうやってインタビューに答えているかは、下記の参考サイト「宇宙航空研究開発機構」での映像でごらんください。車イスに特製のパソコンが設置されていて、講演ではあらかじめ登録してある内容が再生されます。目と頬の筋肉の動きでパソコンを操作し、データを入力し、それを再生します。

 当日のホーキング博士の印象は今も鮮明に残っています。私の自慢の一つでもあります。そのときすでに博士は指1本も動かせませんでした。記者からの質問にはその場で答えなければなりませんが、博士はおそらく登録してある用語の組み合わせで即座に文章を作成しているのようです。それにしてもびっくりするような早さで答えていました。私は目の前でその様子を見ることができたのです。
 それだけではありません。その回答が周りを笑わせてしまうユーモアたっぷりの文章なのです。博士の文章はわかりやすく、的確で、ユーモアのセンスにあふれていました。博士の天才性の一面がそういうところにも現れているようでした。
 ホーキング博士の言葉の中に、「すべての期待値がゼロになったとき(つまりすべての希望がなくなったとき)、自分の周りのすべてのことに感謝できるようになる」というのがあります。博士は難病のために一時はすべての希望を失ったことがあるのでしょう。それを乗り越えて偉大な業績を残し、これからも残していくのでしょう。人間的にも偉大な人です。
 ホーキング博士を尊敬し、目の前で拝聴するという幸運を持った33歳の私でしたが、あれから人間的にどの程度の成長をすることができたのか?ため息が出ます。
 ホーキング博士の新刊は、子供たちのために書かれた本です。この本を読んだ子供たちの中から未来を担う宇宙物理学者や宇宙飛行士が生まれてくるだろうと思います。博士はいろいろな意味で偉大ですね。

<参考サイト>
次のサイトでは、ホーキング博士のインタビューが映像でごらんになれます。
宇宙航空研究開発機構サイト 「ホーキング博士インタビュー」

(2008.2.10)