時代小説 参考文献情報 上山明彦著

幕末を知るための推薦図書一覧

 今回は幕末を知る上で参考になる本を集めてみた。他にもたくさん出ているが全部目を通しているわけではない。下記のリストは私が実際に読んでみて参考になった本だ。
 幕末は勤王、公武合体、佐幕などそれぞれの立場に身を置いた武士、町人、農民たちが、熱情、忠誠心、義理、人情などに絡まれながらも必死に国のために戦った時代である。
 後の時代の人間が紋切り型に「勤王の志士が正義」であったと断定できるほど単純な時代ではない。そこには現代と同じく純粋な正義感のほかに、政治的野望・陰謀、立身出世欲、自己保身なども渦巻いている。どういう切り口で幕末を描くのか、作家の腕しだいだ。まだまだ切り口はいくらでもある。
 幕末を題材にした小説はたくさん出ているので、それは書店で調べていただきたい。

<推薦図書リスト>
タイトル 著者 出版社or文庫名 上山明彦のコメント
ビジュアルNippon 江戸時代 山本博文 小学館 本書は前回までの推薦図書に漏れていたので、ここに掲載したもの。幕末とは直接関係ない。
江戸時代の図版800点がA4版の大きなサイズでカラー印刷されている。庶民の生活の細部まで確認できるので便利。巻末の江戸時代人物年表やその他の解説も参考になる。
江戸三○○藩 最後の藩主
−うちの殿さまは何をした?−
八幡和郎 光文社新書 幕末、時代の潮流に乗れた殿様、乗れなかった殿様、悪役にされてしまった殿様など、自分の故郷の殿様はどういう行動を取ったのか。読み物としておもしろい本だ。
江戸三〇〇諸侯列伝 別冊歴史読本 新人物往来社 古書でしか入手不可。上記の本といっしょに読むと理解が深まる。
一外交官の見た明治維新〈上〉 (下) アーネスト・サトウ著
坂田精一訳
岩波文庫 文句なしの名著。歴史的な価値のある本。幕末にアメリカ大使専属の通訳として来日したアーネスト・サトウが、幕末の日本の様子、幕府の役人、西郷隆盛をはじめとする反幕派の要人たちの人物像をリアルに描き出してくれる。外国人側から見た当時の実録は少ないので、貴重な本である。
氷川清話 勝海舟 講談社 晩年、海舟が赤坂氷川の自邸で語った内容をまとめた本。「べらんめえ」口調そのままに記述されている。作家としては当時の言葉がどんなものだったかを知る資料にもなる。辛辣な人物評、時局評は歴史的な資料としての価値がある。
新選組始末記 子母澤寛 中公文庫 本書は新選組の実録である。著者が史実を調べ、現地を取材して書き上げた名著だ。新選組の実態を知りたかったからまずこれを読むべし。
幕末 司馬遼太郎 文春文庫 幕末の志士を題材にした歴史小説。歴史的事実をベースにしているが、ストーリーは著者のフィクションである。私の好きな一冊で、幕末の志士の情熱、非情、挫折、混沌といった感情がヒシヒシと伝わってくる。
古典落語 古典落語〈続〉 
(上) (下) (続々)は古書のみ。
興津要編 講談社文庫 幕末とは直接関係ないが、江戸時代の町人の言葉がどんなものであったかを知るには古典落語を読む、実際に聞くという方法がよい。CDもたくさん出ているので名人の落語を聞いて感覚で理解してはいかが。
東海道中膝栗毛 (上 ) (下) 麻生 磯次, 十返舎 一九 岩波文庫 幕末とは関係ないが、一度は読んでおきたい有名な古典。当時の庶民の気分や言葉遣いがわかる。