時代小説 参考文献情報 上山明彦著

江戸の仕事、地理、生活の理解に役立つ推薦図書一覧

 前回に引き続き、事実をベースにした江戸紹介本を集めてみた。江戸時代のおもしろさがわかってきたら、もっと先に進んでみたくなる。それには下記のリストに挙げた本がよいだろう。これらの本も前回までと同様、私上山明彦がすべて手元に置いているものばかりであり、自信を持ってお薦めできる本である。

<推薦図書リスト>
タイトル 著者 出版社or文庫名 上山明彦のコメント
お江戸風流さんぽ道 杉浦 日向子 新潮文庫 江戸庶民の人々の日常生活、娯楽、風俗などを図解入りでわかりやすく解説している。著者は江戸物の漫画や研究書で有名な女性。その思いが伝わってくる。2005年に46歳の若さで亡くなっており、今後も活躍が期待されただけに、その才能が惜しまれる。黙祷。
図説 大江戸おもしろ商売 北嶋 廣敏 学習研究社 江戸時代の商売を絵と文章で解説しているので、そのイメージがくっきりと頭に浮かんでくる。もの書きにはたいへん役に立つ本である。
彩色江戸物売図絵 三谷 一馬 中公文庫 古文書などに描かれている絵を参考に描き直した絵に彩色を施した本。解説もある。いわゆる行商が対象。時代考証に欠かせない本の一つだ。
江戸商売図絵 三谷 一馬 中公文庫 上記と同じ趣旨の本であるが、商売全体を対象としている。絵は白黒のままだ。
江戸吉原図聚 三谷 一馬 中公文庫 上記と同じシリーズの一つ。吉原の風景、花魁、客などを描いた絵と解説の本。江戸の風俗をイメージで知るために必携の本だ。
考証 江戸の再発見 稲垣 史生 河出文庫 時代考証家・稲垣史生が江戸の町とそこで繰り広げられたドラマを紹介する。難しい考証本が多い著者ではあるが、本書はわかりやすくくだけた話でまとめられている。
歴史散策 東京江戸案内〈巻の1 名所篇〉 桜井正信編 八坂書房 現代の東京の写真と地図、古文書の絵、そうした資料を織り交ぜながら、江戸の町の名所を紹介し、現代に残る足跡を追った本である。散策ガイドとして使うもよし、辞典として使うもよし、紀行文として読むもよし。
歴史散策 東京江戸案内〈巻の2 歌舞伎と落語篇〉 桜井正信編 八坂書房 同じシリーズで、歌舞伎と落語を紹介。
歴史散策 東京江戸案内〈巻の3 老舗と職人篇〉 桜井正信編 八坂書房 同じシリーズで、老舗と職人を紹介。
相撲と銅像篇 桜井正信編 八坂書房 同じシリーズで、相撲と銅像を紹介。
年中行事と地名篇 桜井正信編 八坂書房 同じシリーズで年中行事と地名を紹介。
風俗 江戸東京物語 岡本 綺堂 河出新書 「半七捕物帳」で有名な著者が、江戸時代の庶民の暮らしと文化を紹介している。江戸の本当の姿がわかるよい本である。
江戸時代小説はやわかり―江戸の暮らしがよく分かる 市川寛明監修 人文社 江戸の切り絵図と浮世絵を連動させて、江戸をイメージでわかるように解説したムック本。各所に関連するエピソードや、そこを舞台にした小説も紹介している。全編カラー。非常に参考になる本だ。
東京時代MAP―大江戸編 新創社編 光村推古書院 こちらは地図に専念したムック本。江戸の切り絵図の上に、現代の東京地図を重ね合わせて見ることができるという画期的な本だ。これで一目瞭然。歴史的なあの場所はどこに?本書を使えばすぐにわかる。本書は地図だけでなく、江戸の生活、行事の解説もあり、読み物としてもおもしろい。
江戸の料理と食生活―ビジュアル日本生活史 原田 信男編 小学館 江戸時代の人々は何を食べていたのか?どんなふうに料理していたのか?それも文章や絵だけでなく、再現した料理の写真でも見たい。そういう希望に応えたのが本書だ。食べ物にこだわらない作家が多いという批判もある昨今、本書はもの書きにとって必読ですぞ。
一目でわかる江戸時代―地図・グラフ・図解でみる 市川寛明編、竹内誠監修 小学館 江戸時代の生活を、統計的にあるいは科学的に分析した本。家計、米の生産量、地震。火事。飢饉の発生回数、幕藩体制など、数字で見ると江戸時代の印象も変わってくるところがある。意外や意外と。
江戸時代の歌舞伎役者 田口 章子 中公文庫 歌舞伎の歴史、歌舞伎役者の生活、驚きのエピソード、名人たちの芸術論などが、深い分析と簡潔な文章で浮き彫りにされている。歌舞伎に詳しい人も初心者も勉強になることは間違いない。
江戸三○○藩 最後の藩主 八幡 和郎 光文社新書 時代は幕末。うちの殿様は何をしていたのか?時代の先を行った人、乗り遅れた人、反抗した人など様々だ。研究書というよりは読み物として、読んでおもしろい本だ。
「自遊人」 2006年7月号 カラット これは雑誌だが、この号に「下町を歩く 食べる」という特集があり、非常に参考になった。グルメの方にも推薦。バックナンバーは古本屋で入手するしかないかも。