時代小説 参考文献情報 上山明彦著

本格的な時代考証に役立つ推薦図書一覧

 前回に引き続き、事実をベースにした江戸紹介本を集めてみた。江戸時代のおもしろさがわかってきたら、もっと先に進んでみたくなる。それには下記のリストに挙げた本がよいだろう。これらの本も前回までと同様、私がすべて手元に置いているものばかりであり、自信を持ってお薦めできる本である。まだまだあるが、とりあえずすぐ役に立つ本を挙げてみた。
 皆さんは「本がたくさんあって読むのがたいへん」と思われるかもしれない。本当にそうだろうか?そうではない。実際は歴史を調べることそのものが楽しくなるはずだ。
 自分が知っているようで知らなかった世界がそこにある。そこには「封建体制」という窮屈で貧しい世界しかないと思っていたら、人間的に豊かでのびのびとした世界もある。一言で表現するなら、昔のファンタジー・ワールドだ。「勉強」などと思わずに、「趣味・娯楽」として私が紹介した本を読んでいただきたい。

<推薦図書リスト>
タイトル 著者 出版社or文庫名 上山明彦のコメント
普及版 江戸切絵図と東京名所絵 白石つとむ 小学館 江戸時代を知ろうと思ったら、まず必要なのが江戸の町の地図である江戸切絵図だ。本書は尾張屋清七版の切絵図を収録すると同時に、江戸の風景を描いた広重などの錦絵も掲載している。カラー印刷なので、見るだけでも楽しい一冊。
江戸名所図会 角川文庫他 古書でしか入手不可。江戸及び江戸近郊の風景、人々の生活の様子が描かれ、解説も加えられている。時代小説家必携の本である。
時代考証事典 稲垣史生 新人物往来社 古書でしか入手不可。有名作家も愛用している本である。時代考証の第一人者・稲垣史生の名著の一つ。時代小説家をめざす人は必携の本だ。
時代考証事典(続) 稲垣史生 新人物往来社 古書でしか入手不可。上記の続編。
考証武家の世界 ( 稲垣史生 千人社 時代考証家・稲垣史生が、武家社会、特に江戸幕府について考察した本。読み物としてもおもしろい本だ。
すぐそこの江戸―考証・江戸人の暮らしと知恵 稲垣史生 大和書房 上記と同じく時代考証家・稲垣史生が、江戸庶民を中心に考察した本。読み物としてもおもしろい本だ。
江戸年中行事図聚 三谷一馬 中央公論新社 現代では忘れられた年中行事、まだかすかに残っている行事がある。江戸時代はどうであったかを知ることができる。絵で当時の様子が理解できる。「ああ、あれはこういう意味があったのか」と考えさせられる本だ。
江戸庶民風俗絵典 三谷一馬 三崎書房 古書でしか入手不可。
江戸幕府役職集成 笹間良彦 雄山閣 新装版が出ているので入手しやすい。幕藩体制を詳細に分析した名著。図表入りで非常にわかりやすく解説してある。これもまた必携の本だ。
類聚近世風俗志―原名守貞漫稿 喜多川守貞 日本図書センター 古書でしか入手不可。
江戸東京年表 吉原健一郎、大濱徹也 小学館 江戸幕府成立前から現代の東京まで、政治経済から生活風俗、文化に至るまで様々な出来事を年表という形に網羅した本。時代を調べるには便利な本だ。
日本史辞典 朝尾 直弘, 宇野 俊一, 田中 琢 角川書店 日本史の年号や出来事を調べたいときに便利な本だ。