時代小説 参考文献情報 上ノ山明彦著

津本陽著作の推薦図書リスト

 津本陽の歴史小説・時代小説は、史実から真の姿に迫ろうとしているだけでなく、その時代の武士や商人など、その人の価値観、人生観にまで克明に描き上げようとしているところにその偉大さがある。例えば、自分も剣道の達人である著者は、道場剣法には存在しない真剣勝負の本当の姿を描きだす。武士が命をかけて守らなければならなかったものは何かを描きだす。凡人には理解できない偉人の人生観が理解できるように、様々な側面から真の姿に迫ろうとする。その実直で妥協のない姿勢はもっともっと賞賛されてしかるべきであると思う。
 ここに津本陽の代表作を列挙した。まだまだほかにもたくさんの著作があるが、先に読んで参考にしていただきたい。

書籍タイトル (順不同) 出版社 概要(主に出版社のデータより抜粋)
下天は夢か〈1〉 (講談社文庫) (第4巻まであり) 講談社

織田信長の生涯を描いた津本陽の代表作。

雑賀六字の城 (文春文庫) 文藝春秋 鉄砲と水軍で織田信長に徹底抗戦した紀州雑賀衆。その頭領小谷玄意の三男七郎丸の戦雲の中の熱い青春を見事に描破した歴史長篇!
夢のまた夢 (1) (文春文庫) (第5巻まであり) 文藝春秋 明智光秀を破り、天下取りの端緒を握った秀吉。胸に湧く野望の行く手は?寵児の一生を軸に風雲の時代を描く歴史大河の雄編。
乾坤の夢〈上〉 (文春文庫) (中下巻あり) 文藝春秋 『下天は夢か』『夢のまた夢』に続く「夢」三部作の掉尾。ついに日本六十余州を掌中にした天才治世家、徳川家康の生涯に迫る。
前田利家〈上〉 (光文社時代小説文庫) 光文社 時は戦国、尾張荒子の小豪族の子に生まれた前田利家。犬千代を名のる幼少時代より容姿端麗、知略に秀れ、槍をとっては天下無双。信長門下の優等生として闘うこと二十余度、ますます勇名を馳せる。時に勘当を受け、浪人生活を味わったりするが、糟糠の妻まつの愛情に支えられ、群雄割拠の乱世を果敢に切り拓いてゆく。華麗にして波瀾万丈の歴史巨編。
武神の階〈上〉 (角川文庫) (下巻あり) 角川書店 百戦して百勝。越後の虎、上杉謙信の生涯! 14歳の初陣を大勝で飾った長尾景虎は、指揮官として非凡の才を発揮、やがて越後統一に成功する。
武将の運命 朝日新聞 群雄割拠の乱世を生き抜いた元就、信長、家康ら英雄たちの、智謀の限りをつくした苛烈な闘いに迫る、歴史随筆集。
男の真剣勝負 (角川文庫) 角川書店 織田信長、徳川吉宗、渋沢栄一、金子直吉、山岡鉄舟、宮本武蔵ら歴史に名を残した男たちは、剣が峰に立たされた際、乾坤一擲の大勝負に出て、逆境を切り抜 け、己の意地を貫いた英雄たちである。時代が混迷化する今こそ、彼らに学ぶ点は多い。「今最も求められるリーダー」「官僚が学ぶべき人」など、歴史小説の 第一人者が、現代に甦える十六人の英雄(サムライ)の実像とその魅力を描き切る。
千葉周作〈上〉 (角川文庫) (下巻あり) 角川書店 陸前の生家で北辰夢想流を学んだ周作は、幼時より剣術の稀有な才能をみせていた。文化六(1809)年、周作は千葉家の期待を一身に集め、16歳で松戸宿にある一刀流浅利又七郎の道場に入門。天性の剣筋と不眠不休の荒稽古で頭角をあらわす周作に、師の姪の綾が秘かに想いを寄せる。ほどなく相思の間柄になるが、剣術の奥義をきわめるためには、諸国の道場を巡り、死に物狂いで他流試合の数をこなさなくてはならない。悲愴な想いで周作は、綾のいる江戸を後にするが…。津本剣豪小説の代表作。。
春風無刀流 (文春文庫) 文藝春秋 「無我」で虚心の人、山岡鉄舟の悠然たる生涯。 幕末から明治。一刀正伝無刀流を開き、勝海舟、西郷隆盛らと親交を重ね、明治天皇の信頼も得た鉄舟の剣の奥義を究めた生涯を描く
柳生十兵衛七番勝負 (文春文庫) 文藝春秋 川将軍家の兵法師範をつとめる柳生宗矩の嫡男十兵衛は、家光公の近習として幼少より仕える。しかし二十歳の頃、十兵衛は突然、家光の勘気にふれ追放とな る。実はこの追放劇、彼を隠密として野に放つための狂言であった。十兵衛は諸国武者修行と称し、徳川家に仇なす者を討つ旅を続ける。剣豪小説の決定版。
勝海舟―私に帰せず〈上〉 (幻冬舎文庫) 幻冬舎 一八五三年、ペリー来航を機に外交政策で揺れる幕府に一筋の光を与えたのは、一介の小普請組・勝麟太郎が上申した「海防愚存書」。国防組織の近代化を訴 え、老中の目に留まった意見書は、後に江戸城無血開城を実現させる男が世に躍り出る端緒となった―。坂本龍馬が師と仰ぎ、幕末期に日本再生の礎を築いた稀 代の政治家の生涯を描く傑作史伝。
巨眼の男 西郷隆盛〈上〉 (新潮文庫) (中下巻あり) 新潮社 この男の眼は、遠く日本の行く末をみていた。英明の薩摩藩主・島津斉彬の側近として、西郷吉之助は下級武士ながら国事に奔走していた。だが、斉彬の死によ り藩政は一転して守旧化し、西郷は奄美大島での隠棲を強いられる。逆境にありながら島でも人々の声望を集めるが、その人物を時代が再び必要とし、男は生麦 事件、薩英戦争と混迷を続ける薩摩藩を背負って動乱の京に登場した。
修羅海道―清水次郎長伝〈上〉 (角川文庫) (下巻あり) 角川書店 幕末、駿河国清水湊で大きな米問屋をいとなむ若き長五郎は、ある日店先に立った旅の僧からあと3年の寿命と告げられる。養父の跡を継いで商いに精を出して いた長五郎は、その一言で自分の運命を変えた。彼は店をたたみ、女房を離縁して博徒の群れに身を投じる。―「人間、寿命があれば死なねえ。たとえ死んだと ころで、体がなくなるだけで、魂はなくならねえんだ」と考えた彼は、修羅の如く東海道筋を渡り歩いて、男伊達として名を上げていく…。名侠客の実像に迫る 異色作、本巻は、穂北の久六を斃すまでの前半生を描く。
鬼の冠 (新潮文庫) 新潮社 幕末から昭和初期にかけて生きた大東流合気柔術宗家・武田惣角。みずから門人は構えず、国内各地を放浪しては、合気の術を教え歩く。身の丈五尺に足らぬ痩 せ男だが、70歳、80歳と齢を重ねても技法の威力は全く衰えず、合気によって、若年血気の大男をあるときは畳に叩きつけ、またある時は軽妙に投げ飛ば す。神業の如き技を身につけた一人の孤高の達人の生涯を活写する傑作長編。
お庭番吹雪算長〈上〉 (文春文庫) (下巻あり) 文藝春秋 部半蔵の命を受け東海道を行く伊賀忍者・吹雪算長のすさまじき任務。次々と襲い来る不気味な敵の正体は何者か。迫力の伝奇長篇。
人斬り剣奥儀 (新潮文庫) 新潮社 示顕流の組太刀に攻め太刀はあるが、防ぎ太刀はない。朝に三千回、夕に八千回の立木打ちの修練により、攻撃を連続して敵の反撃を許さない太刀筋を身につけ る。死をも怖れぬ激烈な気風の薩摩で育った篠原十内は、戦いの場で潔い死に方をするために、今日も甲声もろとも打ち込みを繰り返す。「松柏折る」など、戦 国期から明治半ばに生きた剣の天才たちの技の究極を描く十編の人斬りシリーズ。
巨人伝 文藝春秋 在野研究者・南方熊楠の矜持と鬱屈の全体像を生々と描破した大河評伝長篇。